好きな本「任意の点P」
"これを、美とする。"
- 作者: 慶応義塾大学佐藤雅彦研究室,佐藤雅彦,中村至男
- 出版社/メーカー: 美術出版社
- 発売日: 2003/04/16
- メディア: 単行本
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3D立体視の本です
この本と出会ったのはもう十年以上前、まだ私が高校生だった頃のこと。
当時コンビニや書店などには3D立体視の本がよく置いてありました。
(流行ってたの?)
↓こんなの
2つの黒点が3つに見えるように焦点を合わせると、、、アラ不思議!!
これをやると目の筋肉が鍛えられるらしく、視力回復にも効果があるとかないとか。
視力がグングン悪くなっていた兄が藁をも掴む思いでやっていましたが、V字回復が起きる事はありませんでした。
(※個人の感想です)
巷に氾濫していたこの類の本は、幾何学模様で埋め尽くされた背景の上にシンプルな文字や図形が浮かび上がってくるというものがほとんどでした。
もちろん平面が立体に見える錯覚の面白さはあるものの、立体がどうのではなく"この絵の中に何がかくれているか"というような謎解き?の印象が強かったです。
3D立体視の本と言ってしまえば同じ様に感じてしまいそうですが、任意の点Pはまるで別物なのです。
外観。この出で立ち。初見ではなんの本か分からん。
何が立体になるかはもう分かっちゃってる
レンズを覗くと....
まるでミニチュアの世界を覗き見るような、小さな造形物を鑑賞するような、そんな感覚。
前述の立体視は焦点を合わせるのにコツが必要ですが、任意の点Pではレンズを覗くだけで立体視が体験できるのでとても簡単です。
私は本屋にサンプルが置いてあり、たまたま手にとって購入に至ったわけですが、正直この魅力は体験してみないと分からないかなと思います。
シンプルながら想像力を掻き立てる図形の数々には、洗練された美しさが宿っています。
この本は"持ち運べる3Dアート作品集"と言って良いと思います。
この本を企画したのは佐藤雅彦さん。数々の有名な広告を仕掛けた方だそうな。
元々のアイデアは佐藤さんが高校の時に、数学の参考書に載っていた空間図形の理解を促す付録からきているそうです。
佐藤さんはそれを見たとき衝撃を下記のように記しています。
私はそれを単なる空間図形の問題を解く手段として見なせなかった。この超然として脳の内に存在する、しかし目の前ににょっきりと確かにある、半・理想の世界。
現実にはないはずなのに、脳内で補正され確かな存在として目の前に現れる世界。それが任意の点Pなのです。
思えば以前紹介した梅佳代さんの本を初めて買ったのも、高校生の時でした。
10年以上経った今でもそれらが手元にあり、出会ったころ同じ様に、むしろそれ以上に愛着があり持ち続けています。
昔から好みが変わらないのか、何も成長していないのか、、、
少し感傷に浸るのでした。
おわり